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2016年7月19日

激闘の末掴んだ優勝
~第40回 日米大学野球選手権大会総括~

「第40回 日米大学野球選手権大会」を、最終第5戦の延長10回にまで及ぶ激戦を制し、3勝2敗で2大会連続18回目の優勝を果たした侍ジャパン大学代表。24選手や監督・コーチ・スタッフ全員の結束力と厳しい経験で得た国際試合での対応力が、今後の球界の底上げに貢献していくことが期待されている。

受け継がれた結束力

「今年はいい形で終われて本当に良かった。去年はスッキリしない形だったからね」
優勝セレモニーを眺めながら、日米大学野球の侍ジャパン大学代表選手団の団長を務めた善波達也前監督はそう呟いた。
 昨夏に韓国・光州で行われたユニバーシアードで、善波監督に率いられた侍ジャパン大学代表は、総合力はもちろんのこと、選手村でも自主的に素振りやトレーニング毎朝・毎晩多くの選手が行うなど高い意識と結束力で、他国を圧倒し決勝戦にコマを進めた。

だが、善波監督体制下3年間の集大成となるはずだった台湾との決勝戦は、無情にも降り続く雨により中止。予備日も用意されていなかったため、両国に金メダルが与えられる「悔しい」優勝で、善波監督や坂本誠志郎捕手(当時明治大、現阪神)の目には光るものがあった。
 また、その無念を間近で見て涙を流していたのが、当時コーチを務め、今年から就任した横井人輝監督だった。
「去年の悔しい気持ちを善波監督から引き継いでいます。その気持ちを忘れて試合を戦うことはありませんし、この2年間はその雪辱の気持ちしかありません」と言い切るように、その第一歩が日米大学野球を制することであり、集大成が来年台湾で行われるユニバーシアードでの単独金メダル獲得だ。

そのために、まず投手である柳裕也(明治大)に主将を任せるという代表チームとしては異例の人事を敢行した。
それは昨夏のユニバーシアード2試合(開幕戦、準決勝)で好投した実績と経験に加え、「こちらから何かを言う前に、自らチームのために動いてくれるだろうという期待があり彼に託しました」と、その人間性や統率力にも全幅の信頼を置いた。
 すると柳は、選考合宿から宿泊施設の全部屋を回り、50人いる候補選手全員と会話を交わすなど意思の疎通に心血を注ぎ、時には自ら体を張ってチームに笑いをもたらすなどチームの雰囲気を明るくさせた。グラウンド上でも自らが率先して声を出すなどし、横井監督が直前合宿のテーマに設定していた「戦う集団」を、代表24人で始動した直前合宿前半で柳を中心に作り上げた。また自身も第2戦で7回を投げ無失点12奪三振、第5戦で4回3分の2を投げ無失点7奪三振と大学米国代表打線を手玉に取った。

また、野手では唯一の国際大会経験者で、3年連続の大学代表選出となった佐藤拓也外野手(立教大)が自らの経験を他の選手たちに伝え、自らも第3戦以降は毎試合で安打を記録し、優勝のかかった第5戦では貴重な2点タイムリーを放つなど活躍した。これは昨年、同じく3年連続の選出でチームを引っ張った坂本や吉田正尚外野手(当時青山学院大、現オリックス)らの姿に重なる。
 大会後、横井監督は優勝の要因を問われ、「柳を主将にして、戦う集団を早く作れたことです。そして、我々が伝えようとしていたことを柳、佐藤の経験者が実践して伝えてくれたことです」と2人を称えた。

厳しい経験が球界全体の底上げに繋がる

大学米国代表の強さも侍ジャパン大学代表選手たちの成長に繋がった。
「投手陣は、過去にこの大会で来日したチームの中でもトップレベルではないか」と横井監督が舌を巻いたほどで、最速150km/hを超えるストレートと140km/h台後半にもなるムービングボールを武器にする投手が左右で複数おり、侍ジャパン大学代表打線は第4戦まで5得点と苦しんだ。
「データを取っても、何の球種かも分からない140km/h台後半の動くボールが来る。打席の中で感じたことを生かしていくしかない」と横井監督が話していたように、選手たちは悪戦苦闘しながらも徐々に感覚を掴み、第5戦では5点を奪って優勝を決めた。

また走力の高い選手たちを多く選考したにもかかわらず、5戦通しての盗塁は辰己涼介外野手(立命館大)と吉川尚輝内野手(中京学院大)がそれぞれ1つ決めたのみ。ベンチからサインは出ていたものの、米国投手の独特のフォームやボークすれすれの牽制球などに戸惑い、選手たちがスタートを切れない場面や牽制死となる場面が目立ったことは、来年への大きな反省材料となった。

一方で、「これで監督が“国際大会は厳しいぞ”と言い続けてきたことの意味が分かったはず」と善波団長が話したように、将来的にMLBで活躍が期待される選手たちのレベルを体感し、国際大会の厳しさをこの24人が経験できたことは大きい。
 「柳を中心にチームが結束して“これぞ代表戦”という試合を制することができました。彼ら24名にはこの経験を各チームに持ち帰って各リーグそして大学球界の発展に貢献して欲しいです」と会見を締めた横井監督。

今回のチームは「日米大学野球を優勝するための布陣」と語っていたが、3年生以下の選手も10人代表に名を連ねており、彼らがこの経験をいかに生かし、レベルアップしていくことが来年のユニバーシアードにも繋がっていく。
また4年生14人が来年以降、プロ球界や社会人球界で活躍することが日本球界全体そして侍ジャパントップチームの底上げに繋がっていく。
 受け継がれるべき侍ジャパンの魂を吸収した選手たちが、今回の貴重な経験を生かし、日々の生活や練習、試合に励んでいく姿を期待してやまない。

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