間もなく開幕WBC! 侍ジャパンが3.3阪神戦で見せた復調の兆し

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2月23日から合宿、強化試合を重ねてきた侍ジャパン。3月3日と同5日の京セラドーム大阪での直前強化試合を経て、いよいよWBC本大会開幕戦を迎える。チームは「優勝」を目標に据えるも、強化試合では思うような結果を残せておらず、メディアやファンは総じて不安を感じているのではないだろうか。だが、3日の阪神を相手にした強化試合では、光も見えてきていた。

取材・文/永塚和志

主軸・中田翔の本塁打という収穫

勢いに乗れない侍ジャパンへの危機感———。
それを生み出すなによりの理由は、小久保裕紀監督が常々チームの柱になると主張してきた投手陣が、やや不安定であることだろう。ただ、通常であればまだ大半の選手がトレーニングに励むこの時期、選手が力を十分に発揮できないのは日本に限ったことではない。それに、当たり前ではあるが、どのチームも強化試合にピークを合わせているわけでもない。侍ジャパンにとっての課題は少なくないのは事実だ。また状態も絶好調というわけではない。だが、試合を重ねるごとに修正ポイントは減り、修正すべき幅も徐々に小さくなっている。

3月3日の阪神タイガースとの強化試合では、結果的に4対2で敗れたとはいえ、小久保監督ら首脳陣が望むようなロースコアの展開にすることはできた。先発・武田翔太(ソフトバンク)が変化球の制球に苦しみ1回、2回と失点したが、その後を継いだ投手は総じて安定したパフォーマンスを見せた。打者は前半こそうちあぐねる場面が多かったものの、これまで低迷していた中田翔(日本ハム)に一発が出たことは収穫だろう。

中田はこの試合、稲葉篤紀打撃コーチから「フィールドに(打球を)入れようとせず、ファウルでもいいから」という助言を受けていたという。当てにいくのではなく、持ち味である思い切りのよいスイングを心がけろということであろう。それを見事に実践してみせた中田は試合後、肩の荷が降りたような表情を見せ「変に考えすぎず攻めて。攻めていけたら」と自身への期待を込めた言葉を残し、帰りのバスに乗り込んだ。主軸の不調は、打線全体に影響するものだ。チームの主砲のひとりに本塁打が出たことは、今後の打線に小さくない好影響が与えるはずだ。

唯一のメジャーリーガーで、内川聖一(ソフトバンク)と並んで日本では史上最多3度目のWBC出場となる青木宣親(アストロズ)がチームに合流し、状態の良さを示したのも収穫だった。3日の試合、結果は1安打だったものの、捉えたライナー性の当たりが中堅手の正面を突いたり、無死走者一二塁の場面で巧みなバットコントロールで一二塁間を狙った進塁打を打ったりと、内容は総じて良かった。
日本のプロ野球、メジャーリーグ、そしてWBCと豊富な経験、実績を持つ青木にはリーダーとしての役割も求められているようだが、彼が合流したことで、まだ経験の少ない選手が多い侍ジャパンに「柱」が備わり、落ち着きをもたらしたようにも映った。

実際、小久保監督は先の無死一二塁の状況で、青木に犠打をさせなかったことについて、「どういった打撃をしてくれるか見たかった」と話している。青木はその期待に応え、卓越した技術できっちりと仕事をした。細かな野球で少ない機会を確実に得点につなげていくことは日本の野球の真骨頂であろうが、それは今回も変わらない。その意味では、青木が進塁を意識した打撃を見せたことで、侍ジャパンは改めてチーム一丸となることの必要性を意識したのではないだろうか。

醸成されているチームとしての一体感
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上下関係があり、総じてシャイであることが多い日本人選手たちの集まりであるから、こうした選抜選手で構成されるチームが一体となるためには多少の時間がかかるものだ。だが、小久保監督が就任してからは中田や坂本勇人(巨人)、藤浪晋太郎(阪神)、牧田和久(西武)らを中心にある程度決まったメンバーで試合をこなしてきた甲斐もあって、雰囲気は良いように見える。青木や内川といったベテランが積極的に選手たちとコミュニケーションを取る一方で、鈴木誠也(広島)ら若手も守備練習などで声を枯らさんばかりの大声を出していたことも、グラウンドに明るさをもたらしていた。

とはいえ、打線が爆発したり、投手陣が相手を完封したりする胸のすくような試合がないことに、ファンが不安になるのは理解できる。「大谷翔平(日本ハム)が辞退しなければ」「あの選手が選ばれるべきだった」「ロスターの内訳はこうすべきだった」などを議論することは、いまとなっては不毛だ。この先は、選ばれた選手でどうするか。投手陣では松井裕樹(楽天)、打者では松田宣浩(ソフトバンク)あたりが本来の力を見せられていないのが気がかりではあるが、全般的に調子を大きく崩し、起用のメドが立たないような選手はいない。

右ふくらはぎを痛め出遅れていた嶋基宏(楽天)は唯一そうした存在だったが、4日に辞退を表明し、炭谷銀仁朗(西武)が追加招集された。大会直前の合流ではあるものの、2013年の第3回大会をはじめ、ある程度侍ジャパンでプレーした経験を持つ炭谷ならば、チームにフィットするのに多くの時間はかからないだろう。

とにかく「試合をつくること」と「先制すること」
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ポジティブな言葉ばかりを並べたようになったが、無理をして述べているわけではない。確かにここまでの強化試合は課題が多く出た。ただ、WBCは「かなりの」短期決戦である。「短期決戦」という言葉は、日本シリーズのような戦いに対しても使われるが、同シリーズのように同じチームが続けて戦うようなそれとは性質が異なるものだ。普段戦わない外国のチームと一戦ずつ戦っていくのがWBCであるから、月並みな言い方になってしまうが、なにが起きても不思議でないのだ。

それだけに小久保監督の下す采配が勝敗を分ける可能性も大いに出てくるとも言える。今回の侍ジャパンの先行きに対する周囲の不安は、同監督がNPBでチームを指揮した経験がないことなどに起因するもののようだが、本大会でのベンチワークは注視すべき点のひとつだろう。

思えば、第1回大会で日本は最終的に優勝したが、そこまでの道のりはほとんど奇跡の連続のような形で、2次ラウンドでは1勝2敗と負け越しながら決勝ラウンドへ進んでいたりもした。第3回大会もベスト4まで進み3位に入ったものの、序盤はブラジルや台湾といったチームにも苦戦し、その都度薄氷を踏む思いをさせられた。今回も日本にとって厳しい大会になることは間違いない。
大事なのはいかに自分たちが勝つチャンスを増やしていくかだ。それは日本的に言えば「試合をつくる」ということになってくるのだろう。まず、小久保監督が言う通り、制球がよく、粘り強い投手陣がどれだけ失点を少なく抑えられるかが肝要となってくる。
また、その強みである投手力を生かすためには、先にスコアボードに得点を刻み、主導権を握ることだ。3日までの計4試合の強化試合で、侍ジャパンが先制したのは3月1日の対台湾プロ野球選抜チームとの試合のみ、その試合は9対1で勝利している。4日に阪神対オーストラリアの試合を視察した小久保監督も試合後、「先取点を取るのが大変だ」とコメントしており苦慮しているようだ。相手の先発投手を早々に捉え、チャンスをつくり先にスコアする———これには事前の準備、打線の奮起、適切な采配のいずれもが関わってくることだろう。

いずれにしても本番は目の前だ。本稿執筆時点では5日のオリックス・バファローズ戦を残しているが、強化試合とはいえ最後の1試合は快勝して、本大会へ臨んでもらいたいところだ。

(著者プロフィール)

永塚和志

英字紙『ジャパンタイムズ』記者として国内プロ野球、バスケットボール、アメリカンフットボール、陸上競技などを担当。ワールドベースボールクラシック(WBC)やサッカーW杯、NFLスーパーボウル等、海外のスポーツイベントの取材経験も豊富。

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